※ 本記事について: 観戦を楽しむための見どころ整理を目的とした個人的なコラムです。賭け事の判断材料としての利用は意図していません。掲載するデータは観戦の補助線であり、結果を保証するものではありません。

同じグループの第2節を戦う2チームが、これほど違う表情で試合に入ってくるのは珍しい。日本は初戦でオランダと2-2。優勝候補と互角に渡り合って勝点1を持ち帰り、足元はしっかりしている。一方のチュニジアは、初戦でスウェーデンに1-5。前半のうちに崩され、立て直す間もなく失点を重ねた。勝点0、得失点差マイナス4。この第2節は、両者にとって意味の重さが正反対の90分になる。

日本にとっては「もう一歩」を踏み出す試合だ。ここで勝てば勝点4。グループF(オランダ・日本・チュニジア・スウェーデン)の力関係を考えると、第3節を残してかなり楽な位置に立てる。逆にチュニジアは、ここで負ければ第3節を待たずに敗退が現実味を帯びる。追い込まれた側が牙を剥くのか、それとも初戦のダメージを引きずるのか。私が一番気になるのは、そのあたりではないかと思う。

まず、初戦の答え合わせから

オランダ戦のプレビューでは、私はこの試合を「1-1あたりの低い競り合い」と見ていた。日本は守ってカウンター、最良で1点を守り切る――そんな絵を描いていた。蓋を開ければ2-2の打ち合いで、これは外した部類だと思う。日本の攻撃は私の想定よりずっと前に出ていたし、オランダの守備も思ったほど堅くなかった。

反省があるとすれば、スコアをロースコア側に寄せすぎたことだと思う。代表の一発勝負、しかも実力が拮抗したカードでは、両チームとも点を取り合う展開は十分に起こる。なのに「堅い試合になるはず」という思い込みが先に立ってしまった。ここはチュニジア戦を見るうえでも引きずりたくないところで、今回は「日本が崩しきれずに苦しむ展開」と「点を取り合う展開」の両方を、頭に並べて見ておきたいと思っている。

監督が代わったチュニジアを、どう読むか

スウェーデン戦の1-5は、ただの大敗では終わらなかった。この結果を受けてチュニジアは監督のサブリ・ラムーシを解任し、後任に経験豊富なエルヴェ・ルナールを据えたと報じられている。初戦は3バックの両脇にワイドを下げて5枚で構える形だったが、その背後をスウェーデンの速い攻撃に突かれて崩れた。新指揮官がまず手を付けるのは、この守備の作り直しになるという見方が多いようだ。

そして、ここが今回いちばん読みにくいところだと思う。新体制が初戦の5バックを続けるのか、それとも4バックに組み替えてくるのか、各所の予想は割れている。監督が代わった直後のチームは、布陣も人選も蓋を開けるまで分からない。守備を整え直して手堅く来るのか、それとも負ければ終わりという状況で開き直って前に出てくるのか。この「どう出てくるか分からなさ」が、日本にとって最初の難所になりそうな気がする。立ち上がりの15分でチュニジアの重心と並びを見極めること自体が、この試合のひとつの見どころではないかと思う。

ただ、布陣がどう変わってもチュニジアに残る弱みがある。直近の国際試合を並べてみると、得点が特定のエースに集中しておらず、いろいろな選手が1点ずつ取っている。裏を返せば「この選手に持たせれば点になる」という頼れる仕事人がいない。守って、数少ないチャンスを一発で仕留める――その「一発」を託せる存在が薄いというのは、競った展開に持ち込みたいチュニジアにとって、地味だが案外大きな弱点だと思う。

数字がうっすら示す傾き

両チームの直近の攻守の平均から期待得点(λ)をざっくり見積もると、日本が1.7前後、チュニジアが0.7前後に落ち着く。日本がおおむね1点強リードする傾き、というくらいの話で、これは具体的なスコアを当てにいく数字ではない。ブックメーカーも日本を明確な優位に置いている。期待得点という考え方そのものはポアソン分布の解説に書いたとおりで、あくまで「どちらにどれだけ傾いているか」を眺めるための補助線だ。

注意しておきたいのは、この種の数字が苦手とする展開がまさに今回起こりうること。引いて守る相手に日本が手を焼き、0-0や1-0のまま時間が過ぎる試合は、平均値の計算が思うより高い確率で現実になる。日本がボールを持つほど、相手は人数をかけて守りを固める。日本代表のデータプロファイルで触れたとおり、今の日本の強みは守備の安定にあって、「持たされた状況をこじ開ける」部分はこの大会を通じて問われ続けるテーマになる。チュニジア戦は、その最初の試金石でもある。

当日に私が見ているポイント

一つめは、チュニジアが前から来るのか、引いて構えるのか。新監督がどんな絵を描いてきても、突き詰めれば論点はここに行き着く気がする。負けられない試合で前に出てくれば背後にスペースが生まれ、初戦のオランダ戦で見せた日本の前向きな攻撃がそのままハマる。逆に人数をかけて引いてくれば、日本がどれだけ我慢強くサイドを変え、ブロックの外から相手を動かせるかの勝負になる。日本がこの大会で問われ続ける「引いた相手をこじ開ける力」の、最初のテストになりそうだ。

二つめは、日本がセットプレーと先制点をどう扱うか。引いた相手を崩す近道はセットプレーであり、早い時間の1点だ。オランダ戦で先発した上田綺世や鎌田大地、サイドの中村敬斗あたりが、固いブロックの前でどれだけ良い形を作れるか。先に1点入れば、点を取りに来ざるを得なくなったチュニジアの背後が空き、試合は一気に日本のペースになりやすい。

三つめは、勝点の計算だ。ここで日本が勝てば勝点4で、グループF突破の逆算で書いた「安全圏」のラインにぐっと近づく。引き分けでも致命傷ではないが、相手の状態を考えれば勝ちたい一戦なのは確かだと思う。逆に取りこぼせば、最終節のオランダ戦が一転して重くなる。順位表の力学という意味でも、この第2節は初戦以上に結果がそのまま順位に響く。

個人的には、日本が我慢の時間を経て後半に1点をもぎ取る展開を見たいと思っている。ただ、初戦で「堅い試合」という読みを外したばかりだ。今回もチュニジアが開き直って点を取り合う90分になる可能性は、頭の片隅に置いておく。どちらに転んでも、追い込まれたチームと一歩前に出たいチームがぶつかる試合は、観るぶんにはきっと面白いと思う。