※ 本記事について: 観戦を楽しむための見どころ整理を目的とした個人的なコラムです。賭け事の判断材料としての利用は意図していません。

優勝争いや残留争いの記事を書いた後でこのカードを眺めると、ふっと肩の力が抜ける。マンチェスター・ユナイテッドは勝点65で3位を確定済み。来季のCL出場はすでに手の中にある。ブライトンは7位で、ヨーロッパ枠にわずかな望みを残しているが、6位ボーンマスとの2ポイント差を最終節1試合でひっくり返すには、自力で勝った上で他会場の結果を待つしかない。要するに、どちらも「死に物狂い」ではない。

だが、こういう試合が案外面白いというのを、長年プレミアを見ていると知っている。順位が決まると、選手の肩の力が抜けて、シーズン中は怖くて出せなかったプレーが飛び出す。守備の重圧から解放されたチーム同士が、攻撃的に殴り合う。今日のアメックスは、そういう「気楽な打ち合い」になる予感がある。

両チームとも、もともと点の取り合いが好きだ

そもそもこの2チームは、守備で締めるタイプではない。マンUはシーズンを通して63得点を奪った一方で48失点。ブライトンも52得点52失点に近い、攻めも守りも数字が大きいチームだ。今季の開幕節リターンマッチ(オールド・トラフォードでのマンU 4-2勝利)も、典型的な得点シーソーゲームだった。あの試合の記憶があるから、私はこのカードに「ロースコアの塩試合」をあまり想像できない。

ブライトンのホーム成績は9勝6分3敗と悪くない。アメックスでの戦いは、上位相手にもしっかり点を取りに行くスタイルだ。一方のマンUはアウェイで6勝8分4敗と、引き分けがやたら多い。アウェイで「勝ちきれない」のが今季のマンUの課題だった。順位が確定した今、その課題がどう出るか。

順位が決まった試合ほど、「個」の物語が前に出る

消化試合をつまらないと決めつけられないもう一つの理由がある。チームの順位が決まった最終節は、シーズンを通してのチームの成績よりも、個々の選手の事情が前面に出やすい試合でもあるということだ。来季に向けて出場機会を積みたい若手、控えに甘んじてきた選手にとって、これは数少ない見せ場になる。守備を固める理由が薄れた両チームが攻め合うとき、普段は使われにくい選手が思い切ったプレーを見せることも珍しくない。マンUが63得点、ブライトンが52得点というシーズンの数字は、そのまま「攻撃を恐れないチーム同士がぶつかる」という今日の一戦の性格を表していると思う。

マンUの「テストマッチ」化に注意

私が一つ気にしているのは、マンUがこの試合をどう位置づけるかだ。3位が確定しているなら、来季のCLを見据えて若手を試したり、主力に休養を与えたりする「テストマッチ」になる可能性がある。そうなると、ブライトンのホーム攻撃陣が思わぬ大量得点を奪うシナリオも出てくる。

期待得点を計算すると、ホームのブライトンがやや上回る数字が出る。マンUのアウェイでの不安定さと、ブライトンのホーム力を反映してのことだろう。とはいえ大差というほどの開きではない。こういう「消化試合」は数字通りにいかないことが多い。気楽さが吉と出るか凶と出るかは、フタを開けてみないと分からない。

アメックスという会場の空気

アメックス・スタジアムは、他のプレミアリーグの会場と比べても近代的で、観客席とピッチの距離が近い設計になっている。順位が確定した消化試合でも、ブライトンのサポーターは自分たちのチームの攻撃的なサッカーを楽しみに来る土壌があるクラブだと思う。守備を固めて逃げ切るタイプの応援ではなく、攻めて楽しませてほしいという空気が、この試合でも選手の背中を押すはずだ。

ブライトンというクラブの立ち位置

ブライトンというクラブを見るたびに思うのは、限られた資金力の中でも堅実な補強と一貫したプレースタイルで上位争いに顔を出し続けてきた、プレミアリーグらしい成り上がりの物語だということだ。ビッグ6と呼ばれるクラブほどの資金はなくても、狙いを定めた選手獲得と、監督が代わっても崩さない攻撃的なサッカーの哲学で、シーズンを重ねるごとに存在感を増してきた。今日のヨーロッパ枠争いも、そうした積み重ねの延長線上にある。一方のマンUは、ここ数シーズンの浮き沈みを経て、ようやく3位という順位で今季を終えようとしている。立ち位置は違えど、両クラブとも「これまでの積み重ねが今のシーズンにどう実るか」を占う意味で、消化試合以上の意味を持つ一戦だと思う。

気楽に楽しみたい一戦

正直、この試合は優勝や残留の試合のように手に汗握って見るタイプではない。むしろ、両チームの攻撃陣がのびのびとプレーする様子を、ビール片手にゆったり眺めたいカードだ。シーズンの重圧から解放された選手たちが見せる、ちょっとした遊び心のあるプレー。守ることを忘れたような前がかりの展開。そういうものを楽しみたい。

もしブライトンが先制して、ヨーロッパ圏の望みを最後まで追う展開になれば、それはそれで緊張感が生まれる。逆にマンUが格の違いを見せて快勝すれば、来季への期待が膨らむ。どちらに転んでも悪くない、そんな気楽さがこのカードの良いところだ。最終節の喧騒の中で、ひと息つけるような一戦として観たい。