※ 本記事について: 観戦を楽しむための見どころ整理を目的とした個人的なコラムです。賭け事の判断材料としての利用は意図していません。

正直に書くと、私はこの試合のことを少し心配しながら見ている。アーセナルが勝点79で首位に立っているのは事実だし、2位シティとの差は2ポイント。引き分けでも、シティが取りこぼせば優勝が決まる位置にいる。数字の上では盤石だ。なのに不安が消えないのは、直近5試合がWWWLLと、最後の2つを落として最終節を迎えるからだ。

シーズンの大半でアーセナルは「勝って当然」のチームだった。それが終盤に来て2連敗。優勝が見え始めた途端に足が止まるというのは、サッカーではよくある話で、心理的な重圧が体を硬くしているのか、あるいは単純に主力の疲労が限界に来ているのか。外から見ているだけでは断定できないが、少なくとも「いつものアーセナル」ではない状態でセルハースト・パークに乗り込むことは確かだ。

なぜパレスが厄介なのか

クリスタル・パレスは15位で、残留もとっくに確定している。順位だけ見れば「消化試合の相手」に分類したくなる。だが、私がこのカードを軽く見られないのは、パレスのホーム成績の中身にある。

パレスのホームでの戦績は4勝9分5敗。勝ち星は少ないが、注目すべきは引き分けの9という数字だ。17試合のうち半分以上を引き分けで終えている。これは「勝ちきれない」チームであると同時に、「簡単には負けない」チームでもあるということだ。守ってカウンター、もしくはとにかく失点しない試合運びを、ホームでは特に徹底してくる。アーセナルのように「勝たなければ落ち着かない」状況のチームにとって、こういう相手は一番やりにくい。

しかもパレス自身は、勝っても負けても順位が動かない。失うものが何もない状態のチームほど、上位を相手に伸び伸びとプレーして番狂わせを起こす——これは今季の第34節、第35節でも何度も見てきたパターンだ。第35節の振り返りで書いたエヴァートン vs シティの3-3などは、まさにその典型だった。

数字で見ると、それでもアーセナル優位

ここまで不安要素ばかり書いてきたが、当然ながら戦力はアーセナルが圧倒している。アウェイでも10勝5分3敗、アウェイ得点28はリーグでも上位の数字だ。一方のパレスはホームで18得点しか奪えておらず、攻撃力では明確に見劣りする。

両チームの平均的な攻守の数字から期待得点(λ)をざっくり計算すると、アーセナルが1.36、パレスが0.92あたりに落ち着く。1点台前半の競り合い——つまり「アーセナルが1点取って逃げ切る」あたりが、数字が示す最も無難な着地点だ。問題は、その1点を取れるかどうか。ここ2試合のアーセナルは、まさにその1点に苦しんできた。期待得点の考え方そのものについてはポアソン分布の解説に書いているので、興味があれば。

当日に私が見ているポイント

注目しているのは、立ち上がり20分のアーセナルの表情だ。優勝がかかった試合で、硬さが出るのか、それとも吹っ切れて普段通りのテンポでボールを回せるのか。早い時間に1点取れれば、パレスの「引き分け狙い」の設計図は崩れて、アーセナルが楽になる。逆にスコアレスのまま時間が過ぎれば、セルハースト・パークの独特の圧力と、優勝を意識する心理が、じわじわとアーセナルの足を重くしていく。

もう一つは、同時刻に行われるシティの試合の経過がどう伝わるか。最終節は全試合が同時キックオフだ。シティが先制したという情報がスタンドにざわめきとして伝わったとき、アーセナルの選手がどう反応するか。プレッシャーで攻め急ぐのか、冷静に自分たちのサッカーを続けるのか。優勝争いの最終節というのは、こういう「ピッチ外の情報」が選手の心を揺らす特殊な舞台になる。

個人的な予想を言えば、アーセナルが薄氷ながら逃げ切る展開を見たいと思っている。ただ、もしパレスが前半を無失点で耐えきったら——その瞬間から、この試合は全く違う緊張感を帯びてくるはずだ。そうなったら、それはそれで観戦者としては最高に面白い。優勝争いの最終節とは、本来そういうものだ。