※ 本記事について: 観戦を楽しむための見どころ整理を目的とした個人的なコラムです。賭け事の判断材料としての利用は意図していません。

トッテナムのホーム成績を初めて見たとき、私は二度見した。2勝6分10敗。あれだけ立派なスタジアムを構えるビッグクラブが、自分たちの本拠地でシーズンを通して2勝しかできていない。これは戦力の問題というより、もはや心理的な何かが起きているとしか思えない数字だ。そして皮肉なことに、その最悪のホーム成績を抱えたまま、スパーズは最終節のホームゲームで残留を懸けることになった。

状況はこうだ。スパーズは17位、勝点38。18位ウェスト・ハムとの差はわずか2ポイント。今日エヴァートンに勝てば残留はほぼ確定する。だが、引き分けや負けなら、同時刻のウェスト・ハムの結果次第で、最後の最後に降格圏に落ちる可能性が残る。よりによって、一番勝てないホームで、一番大事な試合を迎える。サッカーの神様は、時々こういう意地悪な配役をする。

なぜスパーズはホームで勝てないのか

私なりに考えてみる。ホーム平均失点1.72というのは、明らかに守備の問題だ。ホームでは「攻めなければ」という観客の期待がプレッシャーになり、前がかりになった結果として後ろが手薄になる——ビッグクラブが自分のホームで苦しむときの典型的なパターンだ。アウェイでは7勝5分6敗と勝ち越しているのに、ホームでこれだけ崩れるのは、戦術ではなく「ホームだからこそ生まれる重圧」の問題だと、私は見ている。

そして今日は、その重圧が「残留」というさらに重いものに化ける。観客は勝利を渇望し、選手はそれに応えようと前のめりになる。そのバランスが崩れたとき、スパーズはまたしてもホームで足をすくわれる——その悪い予感を、私はどうしても拭えない。

エヴァートンは淡々とした相手

対するエヴァートンは10位で、消化試合だ。アウェイ成績は7勝5分6敗と悪くなく、敵地で淡々と試合をこなすのが上手い。直近5試合はDDLLDと勝点を伸ばせていないが、大崩れもしていない。今季の開幕節では、スパーズがグディソン・パークで3-0と完勝している。あの時のスパーズは絶好調だった。半年経って、両チームの立場と状態がここまで変わるのが、シーズンというものの面白さでもあり、残酷さでもある。

期待得点(λ)を出すと、スパーズ1.19、エヴァートン1.44。なんと、ホームのスパーズより、アウェイのエヴァートンの方が高い数字が出てしまう。これはスパーズのホーム失点の多さと、エヴァートンのアウェイでの安定感を反映した結果だ。ホームチームの期待得点がアウェイチームを下回るというのは、それ自体がスパーズの異常なホーム不振を物語っている。

「ホームで勝てない」は、克服できるのか

ホームで2勝しかできなかったチームが、まさにそのホームで一番大事な試合を戦う——この巡り合わせを、私は皮肉というより、ある種の「答え合わせ」だと捉えている。シーズン中ずっと目を背けてきた課題に、最終節になって否応なく向き合わされる形だ。もしここで勝てれば、それは単なる残留の確定以上の意味を持つ。1年間できなかったことを、一番重要な瞬間にやってのけたということになるからだ。逆に今日もまた勝てなければ、この「ホームで勝てない病」は来季に持ち越される重い課題として残る。

「もう少しで」を繰り返してきたクラブの一年

トッテナムというクラブを長く見ていると、「あと一歩」で何かを逃す年が続いてきた印象がどうしても拭えない。カップ戦の決勝、CL出場権争い、時には優勝争いそのものにまで顔を出しながら、最後の詰めで足りない何かがある——そんなシーズンを何度も見てきた気がする。今季はその「あと一歩」の相手が残留争いだったというのが、正直なところ異例中の異例だ。潤沢な資本と高いスタジアムの集客力を持つクラブが、シーズン終盤になって降格の恐怖と向き合うことになるとは、開幕時点では誰も予想していなかったはずだ。だからこそ今日、ホームで勝って残留を確定させることには、単なる勝点3以上の意味がある。今季の「あと一歩」の連鎖を、ここで一度断ち切れるかどうかだ。

同時進行のウェスト・ハム戦が全てを変える

この試合を見るうえで絶対に外せないのが、同時刻に行われるウェスト・ハム vs リーズの経過だ。スパーズに必要な勝点は、ウェスト・ハムの結果によって刻々と変わる。ウェスト・ハムが先制したという報せがスタンドに伝われば、スパーズは「勝たなければ落ちる」状況に追い込まれ、攻めに傾く。逆にウェスト・ハムが苦戦していれば、スパーズは引き分けでも残留できるため、慎重に試合を進められる。

つまりスパーズの選手は、目の前のエヴァートン戦と、耳に入ってくるロンドン・スタジアムの経過の、二つを同時に戦うことになる。この情報戦の中で、ホームで勝てないスパーズが平常心を保てるのか。私が当日に最も注目しているのは、まさにこの一点だ。残留争いの最終節は、こういう「複数の試合が絡み合う緊張感」が味わえる、サッカーで最もスリリングな瞬間のひとつだ。