※ 本記事について: 本記事は公表されている競走成績と血統情報をもとに、種牡馬の産駒がどういう条件で力を出しやすいかを整理したものです。馬券の的中を保証するものではなく、購入の判断材料としての利用は推奨しません。適性の解釈は当サイト独自の見解を含みます。

ガンランナーという馬について、私はずっと単純な像を持っていました。父はCandy Ride、自身はブリーダーズカップ・クラシックをはじめアメリカのダート中距離を制圧したチャンピオン。だから産駒も当然ダートで走るだろう、と。日本に入ってきた産駒が走り始めてからも、その前提を疑ったことはありませんでした。

ただ、私の頭の中にあった「ガンランナー像」はそれだけではありませんでした。道悪になると一段強くなる父。牡より牝のほうが走る父。どちらも、どこかで読んだか、誰かが話しているのを聞いたか、そんな程度の由来しかない印象です。自分で数えたことは一度もありませんでした。

そこで、日本で走ったガンランナー産駒の出走を全部集めて数え直してみました。以下はその結果です。予想が当たった部分と、はっきり外れた部分の両方があります。

対象と集計方法

対象は、父がガンランナーとして登録されている馬のうち、日本で実際に出走したことのある20頭です。この20頭がJRAの平地競走で記録した全206走を集計しました。期間は2017年1月から2026年9月まで。障害競走は含みません。

以下の表で「勝率」は1着に入った割合、「複勝率」は3着以内に入った割合です。数字はいずれもパーセント。どちらも頭数ではなく走数を分母にしています。20頭を合わせた成績は、206走で26勝、3着以内が83回。勝率12.6、複勝率40.3でした。

先に断っておくこと ― 20頭のうち3頭が重い

結果を並べる前に、この集計の弱点を書いておきます。走数を分母にすると、勝ち上がれない馬ほど何度も使われるぶん、成績の悪い馬の比重が勝手に大きくなります。ガンランナー産駒はそれが極端でした。

勝率複勝率
走数上位3頭(28走・27走・16走)3717.022.5
残り17頭1713515.649.6

この3頭だけで全206走の3分の1を占めています。まるで別の種牡馬の話のようですが、どちらも同じ20頭から出た数字です。ちなみに頭数で数えると、20頭のうち14頭が勝ち星を挙げ、17頭が3着以内に入った経験を持っています

どれが正しいという話ではありません。走数で見れば「このレースで3着以内に来る確率」に近く、頭数で見れば「この父から走る馬が出る確率」に近い。ただ、片方だけを見せると読み手を誤らせます。そこで以下の表はすべて、20頭すべての数字と、この3頭を除いた17頭の数字を並べて出します。両方を見て動かないものだけが、この父の性質と呼べるはずです。

ダート向きは、どちらで数えても動かなかった

馬場20頭すべて3頭を除く17頭
勝率複勝率勝率複勝率
ダート16914.242.010318.454.4
375.432.4326.334.4

3頭を除くと両方とも数字が上がりますが、ダートと芝の差はむしろ開きます。勝ち切る力で3倍近い開きがあり、どう数えてもこの順序はひっくり返りません。ここは想像どおりでした。

ただし芝でもまったく歯が立たないわけではなく、37走で12回は3着以内に来ています。「ダートのほうがはっきり上」という程度の差です。

距離は、読みが安定しなかった

馬場距離20頭すべて3頭を除く17頭
複勝率複勝率
ダート〜14006043.33262.5
ダート1500-18009641.76752.2
ダート1900-22001241.7425.0
〜14001030.0837.5
1500-18001942.11741.2
1900-2200714.3616.7

20頭すべてで見ると、ダートの3つの距離帯は41から43の間にきれいに並びます。「距離を問わない父」と書きたくなる形です。

ところが3頭を除くと、その横並びが崩れます。1400メートル以下が62.5まで上がり、中距離は4走しか残らない。あの3頭はダートの中距離を多く使われていたので、除いた瞬間にそこだけ母数が消えてしまうのです。

つまりこの軸は、どちらの数え方を採るかで結論が変わります。距離を問わないのか、短いほうが得意なのか、いまの母数では決められません。私はここを書けないと判断しました。芝のほうはどちらで数えても1900メートル以上が低いままですが、こちらは6走から7走しかなく、これも根拠にはできません。

馬場状態も、差があるとは言えなかった

馬場状態20頭すべて3頭を除く17頭
複勝率複勝率
ダート10542.96654.5
ダート稍重3339.42050.0
ダート2334.81154.5
ダート不良862.5666.7
2630.82330.4
稍重1030.0837.5

ここも同じ構図でした。20頭すべてで見ると、良から稍重、重へときれいに落ちていきます。私は最初これを見て「水が入るほど下がる」と読み、自分の持っていた印象と逆だったので面白い記事になると思ったほどです。

17頭で数え直すと、良と重が同じ54.5で並びました。下がって見えたのは、あの3頭が重馬場を多く使われていたからでした。不良馬場の高い数字も、6走から8走しかないので同じ扱いです。

結局この軸についても、上向くとも下がるとも言えません。私の「道悪で一段強くなる」という印象は、否定もされなければ支持もされなかった、というのが正直なところです。

牝馬の勝ち切る力は、どちらでも残った

馬場20頭すべて3頭を除く17頭
勝率複勝率勝率複勝率
ダート6219.441.94725.551.1
ダート10711.242.15612.557.1
254.032.0244.233.3
128.333.3812.537.5

ダートの牝は、どちらの数え方でも勝率が牡のおよそ倍あります。20頭すべてなら19.4対11.2、17頭なら25.5対12.5。ここは動きませんでした。

一方で複勝率は牝が牡を上回りません。3着以内に来る力は変わらないか、むしろ牡のほうが上で、勝ち切る率だけ牝が高い。同じ「3着以内」でも中身が違う、という形です。

そして芝では、この差が消えます。牝の勝率は4パーセント前後まで落ち、牡を下回る。牝馬の勝ち切る力はダートに限った話のようです。

いちばん強く出たのは、勝ち上がる前

条件馬場20頭すべて3頭を除く17頭
複勝率複勝率
新馬ダート1258.31163.6
新馬450.0333.3
未勝利ダート4463.63369.7
未勝利933.3837.5

ダートの新馬戦と未勝利戦で、3着以内に入る割合が6割から7割。3頭を除いても数字は下がるどころか上がります。全体のダート42.0と比べて明らかに高く、この軸がいちばん頑丈でした。

新馬戦の平均着順は3.8で、12頭中7頭がダート1800メートルからのデビューです。デビューの時点で走れる血統、と読むのが素直でしょう。

裏を返せば、上のクラスで数字を落としているということでもあります。そちらの内訳は集計に取りこぼしがあって今回は詰め切れなかったので、あらためて数え直したいところです。

動いた軸と、動かなかった軸

同じ20頭を2通りに数えてみて、残ったものと消えたものがはっきり分かれました。残ったのは「ダート向き」「勝ち上がる前に強い」「牝は勝ち切る」の3つ。消えたのは「距離を問わない」と「道悪で上向く」の2つです。

集計前に私が持っていた3つの印象のうち、当たっていたのはダート向きだけ。道悪は判断できず、牝馬優勢はダートに限れば当たっていた、という結果でした。

ただ、いちばんの収穫は数字そのものではありませんでした。20頭のうち3頭を入れるか外すかで、これほど結論が動くと分かったことのほうです。もし最初に見た表だけで書いていたら、私は「距離を問わずダートで走り、道悪では少し割り引く父」と書いていました。半分は間違っていたことになります。

この父の産駒を見かけたときに気にするのは、これからは馬場でも距離でもなく、ダートを使われているかどうか、そしてまだ勝ち上がる前かどうかの2点です。牝馬なら、3着に来るかより勝ち切るかのほうを見てみたい。