中3日以下で試合を戦ったクラブの勝率は41.2%。中6日以上休んだクラブより5.6ポイントも高い数字でした。最初にこの結果を見たとき、集計のどこかで間違えたのだろうと疑いました。
「連戦明けは疲労で足が止まる」というのは、試合後のコメントやプレビュー記事で繰り返し語られる話です。ところが手元のデータを素直に集計すると、真逆の数字が出てくる。この数字の正体を確かめるために、もう一段掘り下げて調べ直しました。
休養日数をどう数えたか
対象は5大リーグ(プレミアリーグ・ラ・リーガ・セリエA・ブンデスリーガ・リーグ・アン)とJ1・J2リーグのクラブ。各クラブの試合日程は、リーグ戦だけでなく国内カップ戦(FA杯・コパ・デル・レイ・コッパ・イタリア・DFBポカール・クープ・ドゥ・フランス・天皇杯・ルヴァン杯)とCL・EL・ECLも含めて、2022〜2025シーズンの全大会分を突き合わせました。
ある試合の「休養日数」は、そのクラブの直前の試合(どの大会でもよい)からの経過日数で計算しています。中3日以下(中0〜3日)を「過密日程」、中6日以上を「通常日程」として分類し、中4〜5日はどちらにも属さないグレーゾーンとして除外しました。勝敗の評価対象は国内トップリーグの試合に限定しています。過密日程に分類された試合は4,627件、通常日程は12,004件でした。
まず単純に比べてみる — 意外な結果
グラフにすると差はさらにはっきりします。過密日程の勝率41.2%に対して通常日程は35.6%。分けの比率はほぼ同じ(25.8%対25.9%)なのに対し、負けの比率は過密日程の方が33.0%と、通常日程の38.5%より明確に低い。冒頭で触れた通り、集計を疑いたくなる水準の逆転です。
しかし考えてみれば理由は察しがつきます。CLやELに出場して連戦になるのは、そもそも実力の高いクラブに偏っています。中3日で戦うようなクラブは、欧州カップ戦に出場できる時点で国内でも上位の顔ぶれが多く、対戦相手が誰であれ地力で上回っていることが多い。つまりこの単純比較は「休養日数の効果」ではなく「連戦になりやすい強豪クラブの地力」を測ってしまっている可能性が高いということです。
同じクラブ自身で比べ直す
この交絡を取り除くために、クラブごとに「自分自身の過密日程時」と「自分自身の通常日程時」を比較し直しました。両方の条件で5試合以上のサンプルがあるクラブ156チームに絞り、それぞれのクラブ内での勝率差を平均しています。
156クラブのうち、過密日程で勝率が上がったのは62クラブ、下がったのは92クラブ。平均すると過密日程時の勝率は通常日程時より1.0ポイント低くなりました。単純比較で見えた「過密日程の方が勝つ」という構図は、クラブの地力を揃えると跡形もなく消え、むしろ小さいながらも逆方向に転じています。
1.0ポイントという差は、正直なところ大きな効果とは言えません。ただ、過密日程で勝率が下がったクラブの数が上がったクラブより明確に多い(92対62)という点は、方向性としては「疲労はやはりマイナスに働く」という通説を支持しています。効果量は小さいが、方向は一貫している、というのが今回の実データからの読み取りです。
ホームとアウェイで結果は変わるか
もうひとつ気になったのが、会場によって過密日程の影響が変わるかどうかです。単純比較(クラブ力を揃える前の数字)をホーム・アウェイ別に割ると、過密日程でのホーム勝率は48.1%、アウェイ勝率は34.3%で、その差は13.8ポイント。通常日程ではホーム勝率40.2%、アウェイ勝率31.0%で、差は9.2ポイントでした。
つまり過密日程になるほど、ホームとアウェイの勝率差はむしろ開いています。移動を伴わないホームゲームでは連戦の影響が相対的に軽く、遠征を伴うアウェイゲームでは移動疲労と連戦疲労が重なって効いてくる、という解釈が自然です。この点は当サイトのホームアドバンテージに関する記事で扱った「欧州戦参加クラブは移動疲労効果が縮小している」という考察と、一見矛盾するようで実は補い合う関係にあります。ホームアドバンテージ全体としては縮小傾向にあるとしても、過密日程下に限れば、ホームで戦えることの価値は相対的に大きくなっている、ということです。
この数字をどう読むか
「中3日だから今日は苦しい」という試合前の決めつけは、少なくとも今回のデータからは、過大評価だと言えそうです。同一クラブ内で見ても勝率差は1ポイント程度で、対戦相手の力や試合会場(ホーム・アウェイ)の影響の方がはるかに大きい要因です。
一方で「連戦は無関係」と切り捨てるのも早計です。92対62というクラブ数の偏りは、疲労という要因が確かに存在することを示しています。ただしその影響は、単純な勝敗の分かれ目になるほど大きくはなく、他の要因に埋もれてしまう程度の小さな重みだということです。試合プレビューで「中3日明け」という情報を見たときは、勝敗を左右する決定的要因としてではなく、数ある背景情報のひとつとして受け止めるのが妥当だと、今回の集計を通じて感じました。