※ 本記事について: 本記事は長期データに基づく分析コラムです。記述する数値や考察は分析の参考情報であり、賭け事(スポーツベッティング)の判断材料としての利用は推奨しません。

実況やハイライト番組で「終盤に決まるゴールは劇的だ」という言い方をよく聞きます。ロスタイムの逆転劇、後半終了間際の決勝点。記憶に残りやすいから、そう感じるだけなのか、それとも本当に終盤の方がゴールは生まれやすいのか。前々から気になっていたので、手元にある試合データを使って数えてみることにしました。

結論から言うと、この記事に結論はひとつではありません。数えてみると、単純な「終盤ほど増える」という話では片付かない凹凸がデータの中にあったからです。以下、実際に集計した数字を見ながら書いていきます。

何を数えたか

対象はプレミアリーグ・ラ・リーガ・セリエA・ブンデスリーガ・リーグ・アンの5大リーグと、J1・J2リーグ。2022年から2026年(2026年はJ2の途中経過分まで)のシーズンで、試合が終了(FT)しているもの限定で10,181試合。そこに記録された得点イベントは27,701点でした。オウンゴールとPK成功は得点として数え、PKの失敗は当然ながら数えていません(この除外を最初忘れて151件多く数えてしまい、集計をやり直しました)。

各ゴールを「何分に決まったか」で5分刻みのバケツに振り分けています。アディショナルタイムに決まったゴールだけは別扱いで、前半なら「45+」、後半なら「90+」というラベルにまとめました。

5分刻みで並べてみる

5分刻みの得点時間帯分布ヒストグラム。試合終盤にかけて右肩上がりに増加し、86-90分が最多。
5大リーグ+J1/J2、2022〜2026シーズン、27,701得点の時間帯別分布(5分刻み)

全体を並べると、序盤の1000点前後から後半にかけてじわじわ増えていき、86-90分の2026点が最多になります。ここだけ見ると「終盤ほど点が入る」という通説はきれいに裏付けられているように見えます。

ただし気になるのが「45+」のバケツです。601点しかなく、周りの5分刻みバケツの半分以下。これは「アディショナルタイムは得点が起きにくい」という意味では全くありません。前半のアディショナルタイムは平均して数分しかないのに対し、他のバケツは5分幅で数えているからです。1分あたりの発生率で言えば、45+は他のどの5分バケツより明らかに密度が高い。この点は棒グラフだけを見ると誤解しやすいところなので、あえて書いておきます。

前半と後半、どちらが「点の取り合い」になりやすいか

前半と後半の得点数比較。前半12,209点(44.1%)、後半15,492点(55.9%)。
前半・後半の得点数比較(2022〜2026シーズン合計)

前半12,209点(44.1%)に対して後半15,492点(55.9%)。差にすると10ポイント以上あり、これは誤差では説明しづらい水準です。理由として考えられるのは複数あって、どれか一つが正解というより重なっているのだと思います。運動量が落ちて守備の集中力が切れる時間帯であること、後半途中の交代で足の速い選手や決定力のある選手を投入するチームが多いこと、そしてスコアで負けているチームが後半になるほどリスクを取ってラインを上げること。守備が間延びすれば、それだけ点は動きやすくなります。

個人的に試合プレビュー記事を書く際、「後半の失点率」を軽い指標として見ることがあるのですが、その背景にはこの後半偏重の構造がある、と今回のデータで裏付けが取れた形です。

86-90分、詰まった5分間に何が起きているのか

86-90分の2026点は単独で最多のバケツですが、これに90+の1509点を足すと3535点、全体の12.8%が試合終了間際の数分に集中している計算になります。おおよそ8点に1点は、この短い時間帯で決まっている。

この時間帯は、リードしているチームが逃げ切りを図る時間でもあり、追いかけるチームが最後の交代カードを切る時間でもあります。両者の思惑がぶつかる分、事故的な失点も起きやすいし、劇的な同点弾も生まれやすい。実況が「終盤は目が離せない」と繰り返すのは、感覚の誇張ではなく、素直にデータの形にも表れている現象だと今回わかりました。

リーグによる差はあるのか

せっかく7つのリーグを合算しているので、リーグ別にも割ってみました。「76分以降(76-80・81-85・86-90・90+の合計)に生まれた得点」の割合を見ると、J1が24.9%で最も高く、J2が23.9%で続きます。5大リーグはプレミアリーグ23.3%、ラ・リーガ23.5%、セリエA22.6%、ブンデスリーガ22.6%、リーグ・アン22.7%と、22〜23%台にほぼ収まっていました。

差は2ポイント程度なので大げさに騒ぐほどではありませんが、J1・J2がやや高めに出ているのは興味深いところです。J1・J2は夏場も休みなく高温多湿の中で試合を消化すること、選手層の厚さが5大リーグほど均一でなく終盤に足が止まりやすいことなど、いくつか思い当たる要因はありますが、この集計だけで原因を断定するのは早計です。あくまで「そういう傾向がデータ上は見える」というところまでにとどめておきます。

この数字を観戦にどう使うか

普段の観戦で言えば、「後半70分を過ぎてリードしている試合」を早々に見るのをやめてしまうのは、データの上ではもったいない判断ということになります。全得点の1割以上がラスト5分+アディショナルタイムに集まっている以上、試合が「決まった」と感じるタイミングは、実際の展開よりも早めに訪れがちだということです。

もちろん、この分布は5大リーグとJ1/J2を合算した平均であり、個々の試合の展開やチームの特性で大きくぶれます。守備が堅いチーム同士の一戦なら終盤も膠着したままかもしれませんし、上位と下位の力の差が大きい試合なら早い時間に勝負が決まることもあります。それでも「終盤にゴールが増える」という肌感覚には、10,000試合を超える規模での裏付けがある。今回の集計で、そのことが確認できました。